今更年間ベストアルバム2018
2020年3月。今更2018年ベストの記事書きますね。評価高い順でいきます。
①AINOU/中村佳穂
・年間ベストどころか今まで聴いてきた中で一番レベルのアルバム。音楽に愛された人が質の高いインプットとバンドメンバーに恵まれて完成した、そんな作品。冒頭3曲ではリズムに絡みつくような天性のグルーヴ感を見せつけながら、「永い言い訳」「忘れっぽい天使」といったピアノ弾き語りの曲では祈るように歌い上げる自由自在なボーカルが素晴らしい。ネオソウル、オルタナR&Bからフォーク、民謡まで一曲一曲が個性を放ちながらアルバムとして纏まっている。あらゆる側面において満点のアルバム。
②ai qing/KID FRESINO
・鉄壁の演奏陣を従えた生音バンドサウンドとトラックを行き来するヒップホップと言うには少し異端なアルバム。冒頭、ラップと変拍子ポストロックが融合した「Coincidence」のインパクトが凄まじい。ラッパーらしく多彩な客演を招きながら、後半は本人のパーソナルな部分や死生観も露わになっていく。何よりサウンドの斬新さに惹かれた一枚。
③Moon Boots/Bird Bear Hare and Fish
・活休したGalileo Galileiのメンバーが新しく始めたバンド(後にBBHFと改名)のフルアルバム。UKロックの湿っぽさを意識したというサウンドは、GG時代と比べて音作りへの強い拘りを感じる。特にラストの「Work」は大名曲。トラップを用いたリズムと彼らには珍しい現実の生活についてを歌った歌詞が新鮮だ。今一つこのアルバムの良さを上手く説明できないのがもどかしい。結局、雰囲気(ムード)が好きとしか言えない。
④Whale Living/Homecomings
・それまで英語で歌っていたホムカミが日本語詞に移行した転換点となるアルバム。温かみのあるボーカルと日本語詞と柔らかなギターポップサウンドが見事にマッチしていて結果的には大正解。コーラスワークも良い。時代を超えた普遍性を持つ一枚。
⑤Poly Life Multi Soul/cero
・シティポップの代表格が更なる進化を遂げた一枚。「魚の骨 鳥の羽根」から凄まじい。民族音楽チックな複雑なリズムと狂気を感じるボーカルは不気味ですらある。奔流のようなリズムセクションと呼応するような、「水」関連の単語が頻出しており統一感のある仕上がりになっている。中村佳穂と並びシティポップブームの「その先」を思わせる一枚。
⑥祝祭/カネコアヤノ
・その一度聴いたら忘れられないクセのある歌声の持ち主。古き良きフォークロックを思わせるバンドサウンドと一貫して日常を描いた歌詞が魅力。ラストに収録された弾き語り曲「祝日」は一聴の価値あり。
⑦Luby Sparks/Luby Sparks
・シューゲイザー経由のキラキラした轟音が光るインディーポップ。何処か拙い男女ツインボーカルも如何にもインディーな味わいだ。アルバムリリース直後に女性ボーカルが脱退したことでより儚く響くように感じる。音楽性自体に目新しさは無いものの、淡くノイジーな音像はやっぱり好きだ。
⑧HEX/ROTH BART BARON
・大地を踏みしめるような、土着的な雰囲気を持つフォークロック。伸びやかなボーカルと多彩な楽器によって彩られた、生命感・エネルギーに満ちた祝祭のような音楽だ。他の邦楽では中々聴けない世界観を持っている。
⑨分離派の夏/小袋成彬
・「宇多田ヒカルの新恋人」というよく分からない売られ方でデビューした。聴き手を置いてけぼりにする#1#7の語りや、独特すぎる歌詞で最初はよく分からなかった。だが昨今のオルタナR&Bと、「和」の要素と、クラシカルな音色が相まった彼の音楽は他の追随を許さない完成度を誇っている。
・2018年はとにかく素晴らしいアルバムが多かった。上記9枚意外にも候補がたくさんあってかなり迷った。この年の9枚はフォーク/民謡を感じさせるアルバムが目立った。またシティポップによって開拓され横ノリを、独自のスタイルで拡張した作品が多かった。特に中村佳穂は今までで一番の衝撃。
シングル/EP編
①Sumner of Love/Yogee New Waves
・一つのメロディーをゴリ押しするヨギーの新境地。サウンドメイキングからしてロマンチックな雰囲気になっている。「最終列車よトレイン」「やったこといしようぜ」などのよく分からない歌詞もまさに角舘健悟。
・朝ドラで流れたいた「恋」を踏襲するストリングスの鳴りが特徴的な彼の王道サウンド、STUTSのMPCによる打ち込み、原点となった弾き語り…と異なるパートを一つの曲にした、まさにアイデアに富んだ曲。
③HAUGA EP/Art Theater Guild
・the pillows山中さわおをプロデュースに迎えたサウンドはまさに若返ったピロウズ。捻くれていながらキャッチーなメロと気怠げなボーカルの相性抜群。
④サンダーボルトチェンソー EP/betcover!!
・20前後とは思えない泰然っぷりを持つ。既にこの時点でフィッシュマンズ譲りのダビーな浮遊感とオルタナの攻撃性を兼ね備えている。
⑤BAD KICKS/DYGL
・生々しい熱量を伴った2分半のパンク〜ポストパンクで新境地へ。シンプルなギターリフと政治性を持った歌詞が特徴。
⑥わがまマニア EP/CHAI
・トロピカルな響きで個性と自尊心を歌う「アイムミー」という大名曲を収録。バンドに対する世間からの反応も見つつな作品に。
⑦Freaks & Geeks/THE GREAT ESCAPE /ナードマグネット
・一貫してナードな少年の恋愛模様を歌ってきた彼らが、見えない同調圧力という社会的なテーマを歌詞にした転換点の2曲入りシングル。
⑧今夜だけ俺を EP/菅原拓郎
・9mmでも感じられた歌謡曲の要素を前面に押し出したソロ作品。こっちの活動ももっと展開してほしい。
⑨U.S.A./DA PUMP
・まさかのまさかで音楽シーンに帰還したISSA率いるDA PUMP。冗談みたいなユーロビートにキマってる歌詞、いいねダンスでyoutubeでの再生回数1億回突破という異常なバズを記録。この曲無しで2018年は語れない。